
「私を誘拐してください」と頼んできた女性の依頼通りに"狂言誘拐"を仕組み成功させた便利屋が、彼女が身を隠していた部屋に行くと彼女は殺されているという、一応メインのストーリーは"誘拐もの"というミステリ。
なにを書いてもネタバレにつながりそうなのであまり書けませんが、執筆された当時の、まだ携帯電話はなくダイヤルQ2だったり車載電話だったりを駆使して警察に発信元がバレないようにするアイデアはかなり考えられたものだったはず。自分はまだわかりますが、理解できない人も多くなっている時代になってきているはずなので。
そして誘拐ものの最大の難点、身代金取り引きのための電話連絡での逆探知と、身代金受け渡しで人間同士の接触が起こってしまうという点で頭を悩ませるのは、誘拐犯人と作家(汗)であることは間違いないので。
最初からの不可解な点が作品を通してつきまとわってしまうところと、誘拐された女性の夫の弟が作品序盤でかなりキレる頭脳を見せていながら、後半では消えてしまうところはちょっと残念ですが(爆)、一気に読み進められたのは作品が面白いからかと。
法月綸太郎氏の解説も、ここ数年自分が読んでいる岡嶋二人氏と歌野晶午氏の相互の影響を記しているのもかなり興味深い。