2010年07月28日

我孫子武丸 / 速水三兄妹シリーズ

DVDを焼いたりしている間はずっと読書していたので、我孫子武丸の『速水三兄妹シリーズ』3冊を一気読み。

8
8の殺人

著者のデビュー作。
上から見ると8の字をした屋敷で起こる2件の殺人事件に、事件を担当する速水恭三警部補はもちろん、弟の慎二と妹の一郎(いちお)も乗り込んできて事件を推理するという。
展開は早くて(15ページ目でもう1人死んでいる(笑))、また全編ドタバタの喜劇で進んでいく作品。

デビュー作ということもあってか、2つの事件のトリックはそう難度の高いものではなく。どうしても習作の手触りはありますが。
ただ、巻末の
島田荘司氏による『本格ミステリー宣言』によって、その習作度合いも"有り"になってしまうのはズルい気もしたり(笑)。


Zero
0の殺人

冒頭の"作者からの注意"で、
容疑者4人が明記されているという非常に特異な作品。
なにを書いてもネタバレに近づいてしまうと思いますが、中盤で起こる飛行機爆破テロの落ちが最後に付いているというのもなかなか。
タイトルの"
ゼロ"というのは、最後の最後に真相がすべて判明するとわかるという。
やや短めの作品ですが、アップテンポな展開・相変わらずのユーモア・驚くべき事件の真相と、かなり特異なミステリだと思います。


Mebius
メビウスの殺人

この作品もかなり変わっていて、まずページをめくると登場人物の最初に、
椎名俊夫……学生。連続殺人犯。
と書いてある(爆)。
じゃあなにが謎となるのかというと、その連続殺人犯と交互に殺人を犯す人物がいるというのと、殺害現場に残された
「2-2」「1-3」「3-3」「3-1」「1-1」「1-2」「3-2」
という2つの数字が記されたメモ。
今作も展開は早いですが、やはりそれと並走するユーモアとナンセンスと優れたプロットとロジック。
被害者達をつなぐ"
ミッシングリンク"が明かされたときは唖然としますが、それもすべて読者の目の前で行われていることなので。


現在では、『
かまいたちの夜』のシナリオ作者としての方が有名かもしれない作者ですが、作家生活初期の作品とはいえこのシリーズの出来は非常に優れていると思います。
メビウスの殺人』がもう20年前の作品で、これ以降『速水三兄妹シリーズ』の長編は書かれていないようなのはちょっと残念。登場人物のキャラもかなり立っているシリーズだと思うので。

まあ次は作者の、『
人形』シリーズを読んでいきたいと思います。

Posted by toshihiko_watanabe at 23:19│Comments(0)TrackBack(0) このエントリーをはてなブックマークに追加  

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