先日書いた通り、"探偵法月綸太郎"ものを最初から読み返していて、今回は『二の悲劇(1994年)』を読む。
読み返しているということもあって、今作も読むのは2回目。
全容はなんとなく覚えていて、最初に読んだ時に思った(以前のmyspaceブログに書いた筈)"作者の不調"という印象も覚えていたんですが、再読の今回の印象は前回よりかなり変わりました。
序盤に展開される、"きみ"という二人称で描かれるシーンは相変わらずちょっと読みにくいんですが、作品全体を通して数々の『二』が散りばめられる部分には、改めて驚く部分と新しく気づいて新鮮に思う部分と。
これより以前に書かれた『一の悲劇(1991年)』もそうですが、今作はさらに救いのない結末。
本編最後の2行のやるせなさといったらもう。
この人に"悲劇"とタイトルを付けられたら、読み手はかなり用心して読まないといけないようで(笑)。
正直、最初に読んだ時の評価としては、あまり良いものではなかったんですが、今回は前回よりもずっとグッとくるものがありました。
今作でも、以前の作品『頼子のために』『ふたたび赤い悪夢』の内容とリンクしている部分がありますが、この時期の作者は"探偵法月綸太郎のストーリーは連続している"という意識がかなりあったのかと。
自分も、歳をとって捉え方が変わってきたのかもしれませんが、"作品"というのはあくまで"点"かもしれませんが、作者の中では前作があるから今作があるというような、"線"の部分があるということ。
同じように、人生での出来事は一見、"点" であるけれども、それが起こる由来を考えれば"線"であるということ。
前に読んだときより歳をとったのでより深く読めるようになったとは思いたくないですが(汗)、推理小説としても、フーダニットものの変形作品(?)として、傑作だと思います。
それ以上に、恋愛小説として評価してもいいとも思いますが、まあバッドエンドなんて生易しい結末ではないので。
2回目に読んでこれだけ印象が変わる作品というのは初めてでした。
良い経験だと思います。