小説家の作品は、なるべく順を追っていきたいと思っているので、デビュー作の『長い家の殺人』から。
作品は、大学生バンド「メイプル・リーフ」のメンバーが関わる殺人事件。
プロローグで犯人が聴いているアルバムが、
『Fripp & Eno』の「Evening Star(1975年)」
というのは、個人的に馴染みのあるアルバムで嬉しいというかなんというか。
実は事件の真相を暗示するアルバムでもあったりするのは、あとから考えれば「なるほど」とも思いますが。
そのプロローグのあとに紹介される、コード譜付きの"A7"のコードから始まる曲は、弾いてみるまでもなくその"A7"が妙な響き。
曲自体が暗号になっていることもその暗号自体も、ちょっと解けるものではないんじゃないかとは思いますが。
で、殺人事件のトリックは、なぜかほぼすべてわかってしまいました(汗)。
ミステリの解説本かなにかで読んだことがあったのかもしれませんが。
ただ、裏表紙の紹介文にもある
「ミステリー史上に残ってしかるべき大胆なアイディア、ミステリーの原点(島田荘司氏)」
という部分には納得はいきます。
しかし犯人/フーダニットに関しては、"A7"の曲の暗号と同じように、ちょっとわかるものではないのじゃあないかとも。
作品全体の印象としては、やはりデビュー作ならではの粗さなど感じますが、トリックに自信を持って「これでいくんだ」という強い意志は感じます。
ロックバンドの描写が多いこともあって、個人的には面白く読める作品でした。