2011年10月11日

北森鴻 / 支那そば館の謎

北森鴻氏の『裏(マイナー)京都ミステリー・支那そば館の謎(2003年)』。

Shinasoba

かつて関西一円を荒し回った怪盗という経歴の、京都嵐山の大悲閣千光寺の寺男、有馬次郎を主人公とする短編集。
まあ率直な感想としては、ちょっと煮え切らないトリックや結末が多いかなというものだったんですが(汗)。

しかし、情緒豊かに京都の四季が描かれていたり、明らかに「西の香菜里屋」として文字からも食欲をそそるような料理を出してくる「寿司割烹・十兵衛」の存在など、物語の舞台設定のつくり方が非常に上手い。
というか、大悲閣の住職が安楽椅子探偵の役回りだったり、 主人公が裏の顔(元怪盗)を持っていて若干ハードボイルド風味な部分もあったりと、推理小説を構築するパーツを上手く紡いでいるという印象も。


音楽でもそうですが、もうやりつくされて"まったく新しいもの"というのがなかなか出てこないというのは文学・芸術の世界ともに顕著だとは思うのですが、設定自体はすでにあるものを組み合わせていくバランス感覚を持っているということも、名作を生み出す条件というものになりつつあるのかなと。


作者が去年亡くなられているので、もう新作が出ないということが本当に残念ですが、とりあえず次作の『ぶぶ漬け伝説の謎(2006年)』も探して読んでみたいと思います。

Posted by toshihiko_watanabe at 23:09│Comments(0)TrackBack(0) このエントリーをはてなブックマークに追加  

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