2011年07月25日

徳弘正也 / 狂四郎2030

この間マンガ喫茶で全巻読んだ、徳弘正也氏の『狂四郎2030(全20巻)』。

IMG_1055

自分の世代的には、間違いなく『ジャングルの王者ターちゃん』が代表作となる徳弘正也氏ですが、週刊少年ジャンプからスーパージャンプへと青年誌に連載を移してからは読む機会がなく、特に情報もなく読み始めた今作。

少年誌では不可能だった、作者得意の(笑)エロ描写が直接的になって目立つのは当然として、読んでいくほどに思わされるのは、綿密に組まれた設定とフラつかないストーリー。
週1回発行の少年誌より月2回発行の青年誌の方が、やっぱり書くのに若干余裕があるのかな?とも思わされますが。


テンポが良いし、プロットを展開させつつそれに収拾をつけていくのはこの作者の技術を感じる部分も多々あり、本当に上手い。
八角博士が開発していたタイムマシンは結局放ったらかしでしたが(笑)。

政治に対する作者の考えも前面に出ていて、独裁制も民主主義もそれぞれかなりフラットな視点に立っているスタンスが見られる中、民主主義を批判しているかのような部分もあって、これはかなり驚く。
アルカディア編の結末は衝撃。


最近は映画やドラマの原作としてマンガ作品が選ばれることが多く、またけっこうな割り合いで"原作レイプ"と言われることも多いように思いますが、この作品は映像化は不可能だと思います。
残虐な殺戮シーンは多いし、まずエロいし(笑)。
で、その性的な部分を描かない限りこの作品は成立しないと思われますが、そうすると観る側のニーズと合致しなくなってしまうんじゃないかと。
要はこれを映像化したところで、世間での扱いは"重厚なストーリーのアダルトビデオ"という枠に収まってしまうであろうと。


そういった意味でも、"マンガで描くことの意味"に真っ正面から答えた、希有な作品なんじゃないかと。
自分は大傑作だと思いましたし、なにより面白かった。


部屋にはもう本を置く場所がほとんどないんで(汗)、マンガは特に買うのを控えているんですが、この作品は最近文庫版で全巻出たらしいのでいずれ買おうかと。  

Posted by toshihiko_watanabe at 23:25Comments(0)TrackBack(0) このエントリーをはてなブックマークに追加