2012年01月26日

我孫子武丸 / 人形はライブハウスで推理する

さてそんなこんなの中で読み終わった、我孫子武丸氏の『人形はライブハウスで推理する(2001年)』。

LiveHouse

腹話術師の"朝永嘉夫"が操る、人形の"鞠小路鞠夫"が探偵役の「人形シリーズ」の4作目。今回は短編集。

要は"朝永嘉夫"が二重人格ということでの名探偵なのですが、実はこの人形"鞠小路鞠夫"が名探偵過ぎて、基本的には人形さえ登場させれば一気に解決に進むというストーリーが多い(汗)。
しかしマンネリになりやすいその路線は変えずに、読み手のトータルな興味を主人公の"妹尾睦月"と"朝永嘉夫"との恋愛の進んでいく部分に向けさせているのは非常に巧いつくり方なんじゃないかと。
もちろん、そのせいで今作が推理小説としては評価されにくいんじゃないかとも思いますが。

基本的に1点突破の骨太のトリックをつくるのが巧く、また特に短編では(長編でもよくあったけれど)そのトリック1つで作品をつくりあげていくことが多いように思う筆者なので、トリックの出来が推理小説としての出来に直結する部分はあるかと。本作が短編集ということもあり。

そんな短編6編の中で個人的になかなか良いなと思ったのは「ママは空に消える」。
実際のところは作品タイトルからもトリックの答えはうっすら見えますが、なかなかにかわいいトリックと真相なんじゃないかと。そのトリックを取り巻く事件の方はそういうわけでもないんですが(汗)。


今作を最後にもう10年以上新作が書かれていない「人形シリーズ」ですが、せっかくのキャラの強さを確立している作品なのでまた新作を期待したいところ。
この先の2人の関係を描くのも野暮かとは思うので、良いところで終わっているとも思えるんですけどね  

Posted by toshihiko_watanabe at 00:24Comments(0)TrackBack(0) このエントリーをはてなブックマークに追加