2011年02月14日

有栖川有栖 / 双頭の悪魔

有栖川有栖氏の双頭の悪魔(1992年)』。

Soutou

学生アリスシリーズの3作目ですが、氏の長編ものとしても4作目という、初期の作品。

ストーリーは、前作『孤島パズル(1989年)』での事件のショックから、芸術家達が集まった四国の村"木更村"へ入ったっきりになってしまった有馬麻理亜と、彼女と連絡を取りに向かう私立英都大学推理研究部の4人。
隣の夏森村を拠点に行動するも、木更村の住人に接触を拒まれたことにより、大雨の夜の中で村に潜入し、1人成功する部長の江神二郎
意外に友好的に受け入れられるも、次の日の朝発見される死体。
そしてその事件を知らぬまま、大雨による鉄砲水で2つの村を繋ぐ橋が落ちてしまうという。
さらに夏森村の方でも、その日の夜に起こってしまう殺人事件。
2つの殺人事件を、
木更村の江神二郎・有馬麻理亜と、夏森村の有栖川有栖を含む3人がそれぞれ推理して解いていくという展開。


文庫版で本編が約680ページに及ぶ大作ですが、2つの村での展開が交互に進められていくので、そこまで長い感じ、冗長さは受けませんでした。
推理していく様子は、木更村サイドの江神二郎は天才性の探偵としてパズルを解いていきますが、夏森村サイドの(江神二郎との落差はあるにしても)ポンコツ探偵(笑)3人が間違いを繰り返しながらも真相に辿り着いていくのもなかなか面白い。

しかし2つの殺人事件はほぼ解決に向かったラスト約100ページのところで、夏森村で発見される"あるもの"には驚きと戦慄を覚えるかと。
それを含めて全体の様相が一変していく作品終盤は、非常に読み応えのある内容でした。


有栖川有栖氏が書いた作品の中でもトップクラスの完成度でしょうし、世の中の推理小説というジャンルの本の中でもかなり上位に位置していい作品だと思います。
学生アリスシリーズとしての次作は『女王国の城(2007年)』と15年を経ますが、この長い間隔も、本作の完成度の高さがプレッシャーになった部分もあるのかとも。

読んでいて、密度の濃さと充実感を感じる1冊でした。
素晴らしい作品だと思います。
  

Posted by toshihiko_watanabe at 23:58Comments(0)TrackBack(0) このエントリーをはてなブックマークに追加