2022年10月14日

有栖川有栖 / 江神二郎の洞察

有栖川有栖氏の『江神二郎の洞察(2012年)』のKindle版。
数年前に紙の本はもう置き場がないので買わないようにしたのだけど、シリーズだと数ヶ月ごとに新刊が出るマンガはKindleで買う習慣が出来たのだけど小説等は切り替えのタイミングを失ってしまっていて単純に買わなくなってしまって、最近になってようやく買ってそして読み終えた。

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内容は学生アリスシリーズ初の短編集で、各短編が発表されたのは1986〜2012年の長期間に渡る。
「やけた線路の上の死体(1986年)」が筆者のデビュー作でもあり当然学生アリスシリーズの最初の作品。
長編の学生アリスシリーズとのつながりもあって、「桜川のオフィーリア(2005年)」は長編の『女王国の城(2007年)』でもちらっと言及されていたので、ようやく読めた嬉しさもある。
「蕩尽に関する一考察(2003年)」は、長編第2作の『孤島パズル(1989年)』から登場したマリアが英都大学推理小説研究会に参加する経緯が描かれていて、この作品が並び順では一番最後。発表順ではなく作品内の時系列順なので、ここでようやく長編第2作目の直前になったと。
学生アリスシリーズは長編5作短編集2作となる計画らしいので、ここからあとは短編集第2作に収められるということのよう。

とはいえ長編4作目の『女王国の城(2007年)』からすでに15年が経って、まだ5作目は書かれていない。
『双頭の悪魔(1992年)』から『女王国の城(2007年)』も15年の間隔が開いたけれど、それは更新されるらしい。まあ読者としたら待つしかないし、今回の『江神二郎の洞察(2012年)』を発売から10年経ってようやく読んだ自分にはなにも言う資格は無さそう(汗)。

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久しぶりに学生アリスの作品を読んだということで、そのまま紙の本の長編シリーズも読み返し。
やっぱり面白くて、1日1冊ペースくらいで読み進めてしまった。
そしてそれぞれ10年以上は読み返していなかったのだけど、驚くほどに内容を憶えていなかった(爆)。トリックも犯人も忘れてしまっていて、ほぼ新作を読んでいるのと変わらない。
まあおかげで楽しめたのですが、今後10年に1度読み返していけばもう新刊は買わなくて良いということになりかねない……。  

Posted by toshihiko_watanabe at 21:28Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加

2011年07月18日

有栖川有栖 / 女王国の城

有栖川有栖氏の『女王国の城(2007年)』。
文庫版(2011年)では2冊、約850ページに及ぶ大作ですが、ほぼ一気に読んでしまいました。

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"学生アリス"シリーズとしては、『双頭の悪魔(1992年)』以来15年振りとなった今作。
クローズドサークルものをひとつのテーマとしているこのシリーズの今回の舞台は、宗教団体の信者がほとんどを占める町。そしてメインとなるのは、教祖と幹部が住む近未来的なデザインの、"城"と呼ばれることになる建築物。

ネタバレは極力避けたいので、内容をここに書くのは控えますが、展開としては筆者が文庫版あとがきで書いているように、上巻が"静の巻"下巻が"動の巻"というようなテンポ。

当の宗教団体にまつわるUFOや宇宙人との交信の話からカフカ、また不思議なマチに関する話題が延々続くこともあって、その状況でこの話を続ける余裕があるのか? と思うシーンもあったりはするのですが。
ただ、それらも実は大小の風呂敷であったりして、それを最終的にきっちり畳んでくれるのは読後の充実感につながるのかと。

やはりこの作家は、緻密で丁寧な組み立て方をするのだな、と実感。
なんだかんだでこの長さのストーリーを、潜入・軟禁・脱走と事件・捜査・解決を織り交ぜて飽きない展開に仕立てているのは、本当に組み立て方が上手いなぁと。


殺人事件の犯人が明かされても、まだまだ別の謎が残っているくらい数多く張り巡らされた伏線。
傑作だと思います。  
Posted by toshihiko_watanabe at 23:47Comments(0)TrackBack(0) このエントリーをはてなブックマークに追加