2010年11月03日

我孫子武丸 / 人形は眠れない

我孫子武丸氏の"人形シリーズ"の第3作、『人形は眠れない(1991年)』。

Nemurenai

1作目は短編集、2作目は短めの長編ときて、この3作目も短めの長編ながら、大筋の線はありながらいくつかの場面を経て進んでいくというストーリー。
ちょっと変わった組み立て方で、作者もあとがきで「中途半端と言われなければ良いが」と書いていますが、十分に成功していると思います。

ミステリ本として見た場合の謎解きは3つありますが、1つめはすぐわかりますが2つ3つめはちょっとわかりにくいかと。
データの提示がされているのは間違いないのですが、ちょっと別な知識が必要になるというか。ネタバレは嫌なんであまり書きませんが(汗)。


ただそういった謎解き部分があまり気にならなかったのは、スムーズに展開していくストーリーと、"ミステリ"というよりは"恋愛小説"としての出来が良いのではと思わせるくらい、主人公の女の娘
の心の動きが上手く描かれているという点。

読中の感触は、最近読んだミステリとはちょっと違っていたかも(笑)。

良い作品なんじゃないかと。

次作の『
人形はライブハウスで推理する』は書店・古本屋いずれでもあまり見かけないのですが、見つけ次第読みたいと思います。  

Posted by toshihiko_watanabe at 23:55Comments(0)TrackBack(0) このエントリーをはてなブックマークに追加

2010年10月23日

我孫子武丸 / 人形は遠足で推理する

我孫子武丸氏の"人形シリーズ"の第2作、『人形は遠足で推理する(1991年)』。

Ensoku

主人公の幼稚園の保母と腹話術師の2人が、同行した幼稚園の遠足でバスジャックに巻き込まれるというストーリー。
バスジャック犯は密室状態で死体と一緒にいたことから、警察に追われてバスジャックに及んだという。
バスジャック犯が現れるまで約40ページと、相変わらず展開は早い(笑)。

探偵役は腹話術師の操る人形"鞠小路鞠夫"
腹話術師が二重人格で、人形がいなければ推理力も発揮されないという設定。
推理小説では、探偵が遅れてくるケースがありますが(ホームズの"バスカヴィル家の犬"とか)、この話では途中バスジャック犯によって人形がバスの外にブン投げられて、そのケースになってしまうというのはなかなか面白い。

密室殺人の推理の材料がゆっくりと明かされていく辺りを主な理由にやや冗長に感じますが、事件自体のトリックはたぶんどこかで見たことのあるような設定かも。

基本的にこの"人形シリーズ"は安楽椅子探偵モノですが、探偵がバスジャックされたバスの中という異常な空間に居て、それで外の密室殺人を推理するというのはなかなか斬新な設定。
やや冗長と感じつつも270ページちょいを面白く読めてしまうのは、そういった設定の妙と作者の文章力と構成力なのかと。


次作の『人形は眠れない(1991年)』も続けて読んでいく予定。
  
Posted by toshihiko_watanabe at 20:24Comments(0)TrackBack(0) このエントリーをはてなブックマークに追加