北森鴻氏のデビュー作『狂乱廿四孝(きょうらんにじゅうしこう)(1995年)』。鮎川哲也賞受賞作。
明治初期というわりと珍しい時代を舞台に、時代の変わり目に直面しつつある江戸歌舞伎界で起こる連続殺人事件を解いていく作品。
表紙の幽霊画が、通奏音のように謎を投げかけ続けているというのはなかなか面白い。
探偵役にあたる戯作者見習いの"お峯"はフィクションのキャラクターですが、それ以外の登場人物はほぼ実在で、名女形"三代目澤村田之助"や"河原崎権之助(九代目市川団十郎)"などを主要なキャラクターに据えて作品を組み立てているあたりは、デビュー作にしてすでに綿密な取材をしていたであろうことが伺えるのではないかと。
しかしまあさすがにデビュー作という感触はあって、ちょっと冗長に感じる部分はかなりあったり。
作者の近年の作品も数多く読んできたので、作家として成長したあとにデビュー作を読めばこういう印象にはなるかとも思いますが。
本作の原型となった短編『狂斎幽霊画考』がボーナストラック的に収録されていますが、これはさすがに完成度はまだまだだなぁと思うものの、比較として読むとなかなか面白い。
北森鴻氏の新作はもう出ませんが、まだ読んでいない作品があるので、徐々に読んでいきたいと思います。