ようやく読み終えた、北森鴻・浅野里沙子共著の『邪馬台 蓮丈那智フィールドファイルIV(2011年)』。
作品は、『孔雀狂想曲』の越名集治「旗師・冬狐堂シリーズ」の宇佐見陶子に「香菜里屋シリーズ」の"バー香月"等々の、北森作品のキャラクターや場所が登場し、しかも彼らの視点からストーリーが進むことも多いという、北森鴻作品を多く読んでいるものにはより面白みが深まるという組み立て。
「蓮丈那智フィールドファイルシリーズ」と「旗師・冬狐堂シリーズ」は、お互いのキャラクターが行き来する作品も多かったので、北森鴻氏がさらに多くの作品を作っていけば、手塚治虫作品や赤塚不二夫作品のようなキャラクター展開になったかもしれないということは、非常に惜しいことに思ったり。
"誰がどのように殺されたか"というような一般的なミステリとは違いこの作品の主題は、奇妙な文書「阿久仁村遺聞」の解明と、そこからつながる非常に大きなテーマ"邪馬台国"についての考察。
結末に納得出来る部分はありながらも、現実に結論の出ている事柄ではないので、もちろんこれは北森鴻氏の史観ということですが。
文庫版で全650ページの作品のうち生前の北森鴻氏が書いたのは437ページまでで、残りの約1/3は浅野里沙子氏が引き継いで完成させたもの。
文体等に違和感はないものの、北森鴻氏の頭にあったのはまた別のクライマックスだったのかも???という想像もできるのですが、これは浅野里沙子氏への不満ではなくてこちらの想像力を刺激してくれたということでの興味。
未完で終わってしまったかもしれない、「蓮丈那智フィールドファイルシリーズ」の最初で最後の長編作品を完成させてくれたことには感謝しかできないのではないかと。
北森鴻氏の新作はもう出ませんが、今までの傑作を読み返すことは永遠と出来る。
まずは、この作品につながる「旗師・冬狐堂シリーズ」の『狐闇』を読み返してみようかと思っています。