2010年07月05日

北森鴻 / 狐罠

北森鴻氏の1997年の作品『狐罠』。

Kitsunewana

店舗を持たずに骨董を商う"旗師"、宇佐見陶子を主人公とした長編ミステリ。
同業者の橘薫堂から故意的に贋作を掴まされたことにより(自業自得の世界とはいえ)、仕返しの罠を仕掛けるというのがメインのストーリー。
その裏で橘薫堂の外商が殺されて、それを捜査する2人の警察官が関わってきたりと、場面ごとに視点も目まぐるしく変わるのですが。

しかし読後に思うのは、作中の2件の殺人事件は絶対に必要だったのかな?という。
事件を捜査する2人の警察官を主人公に接触させるための殺人だったと思えなくもないのですが。

あとで読み返すと、殺人現場と日時や被害者の身の回りのもの等が、作品中盤でちゃんとヒントが提示されて、また核心に近いところまで語られているのは非常にフェアなんですけどね。
ただその作品中盤辺りでは、その殺人事件には若干興味が薄れてしまうというか(爆)。
それくらい贋作者に贋作をつくってもらうというメインのストーリー部分が充実しているとも言えますが。

ただ、この作品全体のトリックが明かされる480ページ目(文庫版)は十分に戦慄する内容。


トリックにも関わるのですが、骨董品の美しさ、優れた贋作の美しさ等々の部分で、漫画・ドラマ・映画等の映像作品化はまず不可能な作品だと思います。
読み応えのある長編でした。

続巻の『狐闇』、短編2冊もすでに買ってあるので、読んでいきたいと思いますわ。
  

Posted by toshihiko_watanabe at 23:42Comments(0)TrackBack(0) このエントリーをはてなブックマークに追加