2013年12月26日

北森鴻 / 闇色のソプラノ

北森鴻氏の『闇色(あんしょく)のソプラノ(1998年)』。
一晩で読み終えてしまった。

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大本は山口県で始まった事件が、数十年経った東京の遠誉野市という架空の市で形を変えながら展開されていくというストーリー。
神がいない土地、とされた遠誉野市に引き寄せられた人物たちが絡み合って、起こっていく殺人事件。

土地というものに神秘性を持たせて、ストーリーの怪しい舞台とさせているのだけれど、文章全体の説明にあてる部分のバランスのせいか、あまり読み手には効果的でなかったかもと。
あと、ストーリーの全体が「偶然」というものに支配され過ぎているのは、フィクションとはいえ引っかかる部分?

とはいえその「偶然」を最大限に利用しつつ、組み立てはすばらしいのひと言。
裏表紙にも書かれている、キーとなる童謡詩人の書いた詩の中の「しゃぼろん、しゃぼろん」という擬音の正体がなんだったかということは、作品全体の通奏音。
広げた風呂敷は最後の1ページまで丁寧にたたまれるし、こちらが気づいていなかった細かい部分まで拾ってきて解決をつけるのはさすが。
すべての謎が終盤に向けてどんどん解決されていくのは、読んでいて気持ちの良いことは間違いないと思います。


傑作かどうかはわかりませんが、隙のない作品。
とても面白かったというのが、正しい自分としての評価。  

Posted by toshihiko_watanabe at 23:06Comments(0)TrackBack(0) このエントリーをはてなブックマークに追加