そういえば買ったのはちょっと前ながらここには書いていなかった、Yesの『Relayer (Blu-ray)(2014年)』。 『Close To The Edge』に続いて、Porcupine TreeのSteve Wilsonが旧作をリマスター&サラウンド化を担当した、Yesの1974年のアルバム。
中に入っているブックレットは、今まで見たことのなかったデザインのもの。
CD盤の方は、Steve Wilsonによる2chステレオリミックスを収録。
Blu-ray盤の方は『Close To The Edge』と同じく、5.1chサラウンド・2chステレオリミックス・オリジナルミックス・シングルバージョン・UKビニール版等々大量の音源を収録。
もちろん、今回もメインで聴くのは5.1chサラウンドミックス。
当然ながら、曲自体は今までに数え切れないくらい聴いてきたものとまったく同じ曲なのですが、『Close To The Edge』をサラウンドで聴いた時と同じく、Steve Wilsonの『Relayer』の解釈というものが直接的に伝わってくる印象。 1曲目の22分近くに及ぶ大作「The Gates of Delirium」に顕著ですが、このアルバム全体のテーマは"戦争と平和"。 サラウンドにより、"戦争"部分の非常に密度の濃いサウンドは、周囲に分散されつつそれでも隙間なく聴き手を囲み、"平和"部分の緩やかなサウンドとリズムは、アンビエント感で聴き手を包むという。 この動と静の対比は、2曲目の「Sound Chaser」3曲目の「To Be Over」とでは曲単位で体現されるものですが。
ちなみに『Close To The Edge』で強く感じた、Steve Wilsonの"Yesというバンド"への解釈は今回も同じで、コーラスへの意識の比重はかなり高い印象。 歌声に包まれる「To Be Over」は、本当に美しい空間。
今までのステレオミックスを聴く印象とはかなり違うものにもなりますが、『Close To The Edge』のサラウンド盤と同じように、買って後悔なし。 非常に興味深い、今後も聴いていきたい盤となりました。
聴いてみると、先に書いた通りSteve Wilsonの『Close To The Edge』というアルバムへの解釈。 大きく言えば、Yesというバンドはどういうバンドなのかということを彼がどう解釈しているのかが伝わってくるサラウンドミックス。 とにかくコーラスへの比重が大きい。 おそらくSteve Wilsonは、Yesを"コーラスバンド"として捉えている部分が大きいのではないかと想像されるミックスでした。
没テイクからも追加しているのではないかと思われるくらい、コーラスパートは増やされていた印象。 タイトル曲「Close To The Edge」のクライマックスではほぼ周囲が歌声に埋め尽くされて、和音はギターとメロトロンとピアノが歌声の隙間から聴こえてくるというカオス状態。 とはいえ、それが周囲に振り分けられてなんとか各パートを聴き分けられる状態にされているというのは、サラウンドゆえのミックスだったはずですが。
もう一点印象的だったのは、「And You And I」中盤のインストセクションに入ったあたりでのアンビエント感。 今までに聴いたミックスよりも深めのリバーブがかかり、Yesの曲の宇宙的な感触だったりをリミックスで拡大解釈したのかもと。 ギタリストのSteve Howeは、「天を駆けるペガサスのようなYesのサウンド」と発言していたのを目にしたことがありますが(爆)、それを体現したリミックスかもと。
で、見始めてみると1曲目の「Good Times Bad Times」(1stアルバムの1曲目)からけっこうイイ。 亡くなったジョン・ボーナムに代わってドラムを叩いている息子のジェイソン・ボーナムのパワー感のあるドラムと、ジョン・ポール・ジョーンズのベースギターのサウンドそれぞれがけっこう現代的なサウンドだったのが良かったのだと思いますが、ロバート・プラントのヴォーカルが、さすがに加齢によって高い音に届かなくなっている部分はあるものの、間違いなく"プラントの声質"であり"ツェッペリンのヴォーカル"を聞かせてくれたところは大きいんじゃないかと。 キーを下げて歌っている曲もあるんですが、個人的にはどうでも良い部分。 この3人が現役感のある演奏だったのがライヴ全体が良かった最大の要因かと思います。
ライヴ盤でも出ている『Yessongs(1973年)』は、イエスの最初の全盛期の演奏が収録された作品で、同時期のスタジオ作品の名盤『Fragile(こわれもの)(1971年)』『Close To The Edge(危機)(1972年)』と同じくらい聴いたアルバム。 ライヴ盤とはいえオーバーダビングもかなりされているのだけれど、しかしスタジオ作品を完全に再現したうえにスリリングな演奏というのはやはりスゴい。
ただいったん見始めると展開される演奏はやっぱりものスゴくて、画質や音質の悪さは忘れてしまって引き込まれてしまう。 ほぼ全曲がスタジオ盤よりかなりテンポアップされながらも演奏は完璧だし、18分にも及ぶ「Close To The Edge」の終盤のRick Wakeman(リック・ウェイクマン)のキーボードソロから登り詰めていくエンディングは、本当に素晴らしい。 スティーヴ・ハウもこの頃はものすごくカッコいいし(笑)、ベースのChris Squire(クリス・スクワイア)のアクションは最高にカッコいい。 やっぱりいつかはリッケンバッカーを買おうと、見るたびに思うな(笑)。
もうちょっと収録曲が多ければとか(「Siberian Khatru」は映像付きで見てみたい)、「Yours Is No Disgrace」はさらに長尺のギターソロが展開されていたライヴ盤の方のテイクだったらとか、もうちょっとこうだったらというのはあるんですが、なんだかんだで70分間見入ってしまった作品なのも事実。 イエスの映像作品では、演奏内容は間違いなく一番の作品だと思うので、思い出したら見るようになるかと思います。
作品の方は、68分のアルバム1枚を一応4つのセクションに分けてはあるものの、通して1曲という超大作アルバム『The Way Up(2005年)』をライヴで完全再現しているという、こちらもまた超大作といっていい映像作品。 Pat Metheny Groupがそういうグループとはいえ、ライヴでこの完成度は改めてスゴい。
Antonio Sanchezはサウンドが美しくまた優れたビートを叩き出してくる、21世紀以降では間違いなく世界のトップにいるドラマーなので、この映像は激レアなんじゃないかと(笑)。
『The Way Up』の1曲でディスクは終わってしまっているので、最近のライヴ映像作品としては約68分(インタビューが22分収録)というのはちょっと短いんですが、この長さで完成形という印象を受けるのも確か。 もちろんこのメンバーで他の曲を演っているのを観てみたかったとも思うんですが。 まあ『The Way Up』のアルバムとDVD / Blu-rayで、Pat Methenyとしてはやりきった感が十分にあるんでしょうけど、またの活動再開を期待したいと思いますわ。